*** テキトー日記 (99/09/02) ***

セイウチ君とセッションの想い出

昨日のライブで、あるお客さんからご挨拶を頂いた。けれどボクは彼のことを覚えていなかったのでハナシをしてみたところ、なな〜んだ、あの時の。いやぁ、その節はどもどもども、てなことになった。今日はその時のおハナシをしましょう。

数年前ですが、友達のピアノさんから電話があって「面白い演奏仕事があるけど演らない?」と言う。どんな?と聞けば「ズームイン朝」という全国放送の番組の一コーナーで、なんと水族館のセイウチと一緒にセッションをするという、なんともバカバカしくて嬉しい企画なのでした。

そもそもなぜセイウチがセッションなのか?ですが、これはセイウチやアシカやゾウアザラシ君達にいろいろな芸を仕込む途中で、金色のサックス型のオモチャのラッパを与えたところ、あるセイウチ君がこれをプープー鳴らすことに興味を持ったのが始まりです。ちゃんと自分の腕、といっても前ヒレみたいなものでサックスを両手で挟んでプープー鳴らすのです。

このハナシを水族館がテレビ局に伝えたところ、そりゃ面白い、いっそ生のジャズバンドと一緒に演らせたら絵になるというので急に企画が決まりました。なにしろ企画から本番まで数日しかないというあわただしさなんですね。さてそうなるとこの伊勢志摩地方でこういうおチャラケ企画に喜んで乗るバカなサックス吹きはボクが筆頭でしょうから、当然のようにハナシがボクのところに回ってきましてボクも大乗り気になったという訳です。

当日は二月のクソ寒い中を朝の五時に水族館裏手の大型水槽脇に集合。しかもバンドは全員タキシードです。まだ夜は明けておらず真っ暗。すでにこの時点でバカバカしさに笑いそうになっちゃいます。セッティングなどを済ませリハーサル。ドラムの音やシンバル音などにセイウチ君がビックリしないかどうか?などから始まりましたが、バンドの傍まで連れてこられたセイウチ君を見てその巨大さにビックリしたのはボクのほうでした。体重数百キロですよ。しかもウインクで有名だったゾウアザラシ君もやってきたのですが、こちらは数トンあるんだそうです。まさに象です。

リハーサルといっても、こういう情報生番組ではそのほとんどがカメラの割り振りや立ち位置のリハで終わってしまいます。音楽としてのリハは2分ほど。アナウンサーがどうやってカメラに入ってくるかという部分で、さっきのゾウアザラシの背中に乗って登場というのが予定されていたのですが、これはキャンセルになりました。あまりにゾウアザラシがデカくて肝心のアナウンサーが見えなかったからです。

「ズームイン朝」といってもこれは土曜日の朝の「ズームイン朝サタデー」という娯楽中心のものだったので放映時間も思ったよりも長く、結局4分くらい放映されました。ちゃんとボクのサックスとセイウチ君のサックスの掛合いもサービスしといたのですが、そこの部分もちゃんと全国放映されました。デヘヘヘヘ。

で、昨夜のお客さんとはその時のセイウチ君の飼育調教係の人だったのです。あの時はどーもどーもでご挨拶。その後、一曲終わるごとに熱心な拍手を頂いて嬉しかったです。

セイウチ君と彼

このセイウチ君ももうすでに亡くなったのだそうです。

つづく

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