実家の本棚を整理していたら初めて買ってもらったステレオの取説が出てきた。懐かしい〜。40年近く前のものだ。
もう取説の表紙自体がどこかレトロだったりするでしょ?この頃はテレビやステレオなどの家電が立派な家具調だったりしたものだする。名前も「潮」(うしお)という、なんだかどどーんと来い!てな感じもする立派なもので、きっと革の応接セットのある応接間に見栄を張って鎮座することを予想されて作られたような気がする。
それにこの表紙に書かれた<超音響>とはなんなのだ?40年後のジョシコーセーの言う「もうスッゴイのよ〜。チョー音響なのよ〜」っていうのを予感しているようではないか。
しかしこのステレオのおかげでボクはジャズにハマっていったとも言える。それまで持っていたポータブル(レコード)プレーヤーではLPが掛けられなかった。そりゃ確かに流行り物はほとんどがEPと呼ばれたドーナツ盤だったし、お手軽なソノシートと言われるペラペラなビニールレコードが沢山出回っていた頃だ。
でもジャズはやっぱり硬派なジャンルに所属するもので、誰かの演奏を聴こうと思えばLPの再生が必須なのだ。それで親を口説いてやっと買ってもらったのがこのステレオだったわけだ。
さらにこの頃、三重県でも始まったFM放送。もちろんNHKだけなのだがそれを受信することが出来たのもこのステレオのおかげだった。テレビよりも大きな八木アンテナを立ててやっと受信出来るというものだったが、それでもちょっとでもノイズを減らすためにモノラルにしてさんざん聴いた「ゴールデンジャズアワー」。
エアーチェックなど出来ない(テープデッキなどない。だいたい録音テープは未だオープンリールが中心でカセットじゃなかったしね。)ので、聞き流して後でじっくり聴くとか、繰り返して聴くとかが出来ない。だから放送の時は真剣に、ホントに一所懸命に聴いた。だからその頃一度しか聴いたことのない演奏でもすごーく記憶に残っているものは結構あった。
それが分かったのは、後に大学進学後、東京や横浜のあちこちに沢山あったジャズ喫茶で、レコード演奏としては初めて聴いたはずの有名な演奏が、ことごとく細部まで知っている、いや知って<いた>という体験だった。それもこれもこの「潮」というステレオのおかげだったし、<すでに知っていた>つまり記憶に残っていたのも、なまじ放送内容をとっておく記録メディアがなかったからだとも言える。
まったく、不便なおかげということもあるのだなあ。