ボクが普段飲む酒はほとんどが自宅。なので外で飲む機会はあまり多くないが、外で飲むなら断然バーが好きだ。スナックやらカフェバーではなくて純然たるバーのことね。昔は横浜グランドホテルのバーでバーテンダーと二人きりの空間をいかにリラックスして過ごせるような男になるかというのが夢だった。これは典型的な関東のうるさ型寿司職人のいる寿司屋で粋に食べてくる作法を覚えるというのと同義なぐらいオトナびた行為の一つだった。
幸いにしてバーの方はほどなくマナーを覚え今はバーこそ一番好きな飲食店の形態だと言える。しかし逆に言うと割烹だの小料理屋だのは苦手なほうだ。ついでに言うと焼肉屋でビールとかいうのも得意ではない。とにかく純粋に酒を、あるいは酒と空間を味わうのならば食べ物と一緒のところはパスしたい。グラスに脂が移るようなのは嫌なのだ。ただし食べ物が主体でワインなども飲むというのは全然嫌じゃない。というかそれはそれで好きだったりする。
バーっていうのは照明が薄暗くて音楽がジャズだったりすることが多く、その辺りもボクがバーが好きだという理由に当てはまる。実は今夜は二軒のバーをハシゴしてきたのだが、そのどちらもBGMはジャズだった。今でもコルトレーンが現役で聴けるのはジャズ喫茶よりむしろ普通のバーのようだ。
重厚なグラスでクラッシュトアイスにしたギムレットを飲む。照明を落とした店内のカウンターで会話の間にはジャズが流れ夜が更けていく。う〜む、なかなかに至福の時間だ。