友人のK君が「最近これにハマっている。すごくいいから聴いてみて」といって持ってきたのがテナーサックスのブランフォード・マルサリスのアルバム「Eternal」。こういうしっとりとした曲集はいいねえというからお返しにチャーリー・ヘイデンがキューバのピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバと組んで演っているラテンのボレーロ集からの1曲「El Ciego」を聴かせてあげた。
この曲はメキシコのボレーロ専門のバイオリニスト(名前失念)をゲストに呼んで演奏していて、言ってみれば上質の歌謡曲といったムードもあるのだけど、とにかくまあイイのだ。音楽とはこうでなくっちゃ、という部分も少なからず持っている。単に聞き流せばムーディなスローラテンだけど、演ってる連中が凄腕のプレイヤーばかり。でもそうしたスゴさは垣間見せないままだ。
でK君が置いていったアルバムを聴きながらライナーノーツを読んでいたらいろんなことが分かってきた。まずブランフォードが選んだアルバム一曲目は、元はナットキングコールがルバートで歌っていたという「The
Ruby And The Pearl」。ブランフォードはこの曲をウェイン・ショーターが取り上げていたので知っていたのだそうだ。(ボクは全然知らなかった!)
次に彼はこの曲をラテンのボレーロで演奏することにした。それは前述のチャーリー・ヘイデンのアルバム「ノクターン」をすでに聴いていて、自分もボレーロを演ってみたいと考えていたからなのだそうだ。
なにが言いたいかというと、こちら(聴き手)側の興味の移行と、あちら(演奏者)側の興味の移行がぴったり一致したという事実を知ったからなのでした。移行とは、複雑からシンプル、モダンから伝統、北米から中米、緊張からリラックス、みたいなことだ。しかしチャリー・ヘイデンって人はちゃんと世の中のニーズを先取りしてるような気がするなあ。