二年ぶりにオペラ鑑賞。お題は二年前と同じヴェルディの歌劇「椿姫」。前回はヴェネツィアの歌劇場だったのが今回はプラハ国立歌劇場による出し物となった。二年ぶりに鑑賞するオペラが同じ演目とあってはどうしても前回と比較してしまうのだけど、今回のほうが圧倒的に強く印象に残ったのは演出家アルノー・ベルナールによる舞台装置と出演者の衣装デザインで、全部がモノトーンなのだ。つまり舞台の背景(といってもご覧のような壁と、その配置換えのデザインなだけだけど)も家具も出演者の衣装も全てが白か黒かもしくは濃いグレーなのだ。
前回の衣装が現代風を売りにしていたために、例えば売春宿で大騒ぎなんていうシーンが大変お下品だったのに比べると、今回のはいかにも19世紀のパリのそれといった雰囲気が出ていて、売春宿という場所設定でも、それがアンティークでクラシックな分だけ鑑賞に堪えるという印象だ。衣装はロートレックが描くところの服装を全部モノトーンにしたものと思ってもらえばよい。このポスターでもそういった雰囲気は感じてもらえると思う。ソファも椅子もテーブルも家具は全部真っ白だった。これはなかなか素敵な雰囲気で、やるな!アルノー・ベルナール。ちなみに姓名をひっくり返したベルナール・アルノーはルイヴィトン社のオーナーですってさ。
それから今回のほうに感じるマイナス面もあって、それはプリマドンナでもある主役のソプラノのディミトラ・テオドッシュウさん。テクニカルな面が褒め称えられているように確かに歌は上手いですが、いかんせん、その巨体では可憐で病弱な高級売春婦のヴィオレッタを演じるにはちょと無理があり過ぎませんですかねえ?だから彼女をめぐって男たちが奪い合いの決闘をするというのも、どうもねえ、なにか現実味に欠ける。お顔は綺麗なんですがお体が、、、、、。
床に横たわるっていう場面なんか、あまりの巨体にトドの昼寝って感じでちょっと笑ってしまいました。全然笑うシーンではないことが哀しいです。出演者は主役の彼女以外は全員がダブルキャストで、ということは交代で演ってるわけですが、彼女だけは全部の公演日に出演するということでやはりそれだけの実力なのだと思いますが、でもでも、オペラはビジュアル的な要素も大きいのですから、見た目ももうちょっと考慮してほしいです。エリントンだって見た目が大事って言ってますしね。
あ、そうそう、今回のキャストでは父親役のウラジミール・フメロさんが気に入りました。彼の堂々たるテノールはいかにもイタリア歌劇といった気分を堪能させてくれました。パードレに拍手。