前から観たいと思っていた映画「扉をたたく人」が昨日から市内の映画館で上映されているので、さっそく今日の午後はこれを観てきた。アメリカ映画は久しぶりだけど、これはアメリカ映画であってアメリカ映画ではない。なにしろアメリカで公開された時はたったの4館でのみ上映されていたのに、その内容がクチコミで次第に広がり、ついには270館で上映されるようになったという経緯がある。
アメリカ映画であるというのは、もちろんこれはアメリカで作られた映画で、主要言語は英語で、舞台はNYです。しかしアメリカ映画ではないというのは、まずハリウッド製作ではない、スター俳優は一人もいない、監督も著名人ではない、内容もスペクタクルもCGも無ければ恋愛も特にはマークされていない。そこには国籍や人種を超えた世界共通であろうヒューマニティというものが主題になっていて、同じように国籍を超えて存在する音楽、それもジャンベという素朴なアフリカンドラムを演奏することを通して次第に目覚めて行く様子が描かれています。
素晴らしい!
これは実際にパーカッションを演奏したことのある人なら誰でも共感できると思うのですが、打楽器、それも素手で直接叩くコンガやジャンベなどは、続けて叩いているうちに自分がだんだん無になっていくのが経験できます。きっとこれの延長上には一種のトランス状態があるのじゃないかと思っていますが、少なくとも表面を飾るような日常的防御のような表層は簡単に脱ぎ捨てることが出来ます。これがソウルと言う部分に繋がるのじゃないでしょうか。
映画の話に戻りますが、この主役の大学教授を演じた俳優はこの一作で一気に今年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたそうです。彼にジャンベを教えた青年の母役にはヒアム・アッバス。彼女はボクがこの前観た「シリアの花嫁」では花嫁の姉役でした。今回もシリア出身という設定だったから彼女は本当にシリア人かもしれない。劇中でペラペラッと喋るアラビア語がカッコいいのですよ。ボクも今回一つだけアラビア語を覚えました。シュクラン、ありがとうです。お薦め映画です。