*** テキトー絵日記 ***

2011/07/25

桐野夏生「グロテスク」

階調反転 with Lensbaby

14年前の東電OL殺人事件が最新のDNA鑑定で、犯人とされていたネパール人の男性が冤罪である可能性が出てきたことがニュースで話題になっている。ボクはこの事件の背景を詳しく知らなかったのだけど、Wikipediaに事件に関係したことが詳しく出ていた。なるほど、これは確かにセンセーショナルな出来事だ。

事件はノンフィクション作家によっても描かれているし、またこの事件を題材にした小説も何人かの作家が取り上げている。そうした小説の一つで桐野夏生を代表する作品でもあるのが、この「グロテスク」だ。文芸評論家の斎藤美奈子が解説にこう書いている。以下

「この事件がここまで関心を呼んだ理由は、ひとつには冤罪の疑いを含む事件の未解決性ゆえですが、もうひとつは殺害された女性の「人となり」にあったといえましょう。昼間はエリート会社員、夜は街頭に立って自ら客を引く娼婦。そんな二重生活をなぜ彼女は送らなければならなかったのか。その「動機」の部分で人々はつまずいた。が、先にあげた関連書籍も、残念ながら、一般には「心の闇」と呼ばれるだろう被害者の心情に迫りきれているとはいえません。逆に言えば、その空白地帯を大胆に埋める作品として「グロテスク」は構想されたといってもいいでしょう。」以上

事件を題材にしているとはいえ、これはフィクションである。しかし上記の解説にもあるように、殺された女性の「人となり」を推察しようとすれば、どこまでがノンフィクションで、どこからがフィクションなのか、その境目をはっきりと線引き出来ないところがまたこの作品の魅力でもある。

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