画面を撮影 by X10
弦楽の曲つながりでマーラーのアダージェットのことを知った。これはマーラーの交響曲第5番第4楽章のことで、アダージェットとは「アダージョよりやや速く」を意味する速度標語のことだ。
この曲は「ルキノ・ヴィスコンティ監督による映画『ベニスに死す』(トーマス・マン原作)で使われ、ブームの火付け役を果たしただけでなく、マーラーの音楽の代名詞的存在ともなっている。(wikipedia)」とのことで、そういえばこの映画をまだ観たことが無かったこともあり、余計に興味が出てきて早速ネットレンタルで借りて観た。
原作はトーマス・マンの小説で、彼が実際にベニスに旅した時に出会ったポーランド上流家族の美少年に恋したことから発想してこの小説を書き上げている。その際、彼は親交のあったグスタフ・マーラーが亡くなったこともあり、小説の主人公をマーラーに模して書いたが、小説の方の主人公は有名作家とした。
この小説を映画化したヴィスコンティは、全編にマーラーの音楽・アダージェットを使い、しかも小説では作家だった主人公の職業を作曲家に変更して、さらにマーラーと重なるように作り上げている。ちなみにこのアダージェットはマーラーが妻となるアルマに捧げたことで知られているので、せつない恋心を謳ったものであることは間違いがないと言えそうだ。
というわけで色々と重層的に重なりあった部分もある「ベニスに死す」だが、時代背景として1911年のベニスに集まった上流階級の様子を描いているのだけど、こういうのはイタリア貴族の末裔でもあるヴィスコンティ監督が撮ると細部までもが素晴らしく、なにしろホテル内部などはセットではなく本物のベニスのホテルの一部を改築して撮影したということなので重厚感が全然違ってくる。映画のDVDには本編以外にも、おまけでメイキング編が収録されているのだけど、これを観るとその辺りのことがよく分かる。