*** テキトー絵日記 ***

2012/06/26

「別離」

by X10

イラン映画「別離」を観てきた。タイトルだけ見ると恋愛ドラマのような感じもするが、内容は全然違っていて日常に潜む心理ドラマを見るような趣がある。例によって詳しくは公式ページを見ていただくとして、123分もの間、グイグイと観る者を惹きつけるハナシの面白さは、多重に絡まりあった見事な伏線の交差によって生まれている。

監督が「彼女が消えた浜辺」のアスガー・ファルハディ。去年あの映画を観た時にこの監督の次回作もぜひ観たいと書いたが、その期待を全く裏切らない内容だ。リーフレットによれば<現代社会が抱える様々な問題を浮き彫りにし、私たちの心を大きく揺さぶります>とあるが、まさにその通りの出来栄えだと思う。

この映画は最後のエンドロールのシーン(上手い見せ方だ。これなら観客は席を立たないし立てない)になって初めて劇中音楽が鳴る。そこでやっと今までこの映画の中では音楽が全く無かったことに気がつく。つまりこの映画は出てくる人たちの言葉によって成り立っている。その言葉の意味するもの、その言葉の裏に潜むもの、その言葉が発せられた結果が導く新たな局面など、まるで舞台劇を観ているようでもある。

リーフレットにはこの映画が世界中の様々な映画の賞を受賞したと記されている。その数なんと80冠を超えるそうだ。それって、テクノロジーが日常のコミュニケーションから言葉の重きを奪っていることの逆証明じゃないかと思ってしまった。お薦めです。

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