*** テキトー絵日記 ***

2013/02/05(火)

「ソハの地下水道」

予告編より(新鮮な外の空気を子どもに吸わせるソハ)

高校生の時に観たアンジェイ・ワイダ監督の映画「地下水道」は強烈な印象を残し、たった1回しか観ていないのに様々な場面が目に浮かび、特にラスト近くの絶望するシーンは重く胸に残った。しかしワイダ監督が名を馳せたのは有名な「灰とダイアモンド」のほうだったので、後からそっちも観たがボクには「地下水道」のほうが印象に深い。

それ以来、地下水道という言葉には弱いのだ。もっともこの言葉が意味するのは単なる都会の下水管のことではなくて、ドイツ侵攻後のポーランドにおいて迷宮のように地下に張り巡らされた下水管を使って抵抗運動を続けるレジスタンスや、今作のようなドイツ軍のユダヤ人狩りから難を逃れようとするユダヤ人たちを描く舞台のことだ。

作品はまたしてもというか、史実をベースにしていて、全く最近の面白い映画はそのほとんどが実際にあった話しということになる。実際のところ、虎と漂流したというファンタジックなハナシよりは何倍も印象に残る内容だ。あらすじを簡単に言ってしまうと、シンドラーとか杉原千畝とかにあたる役回りをポーランド人のソハが受け持ち、苦労しながらも14ヶ月もの間、ユダヤ人たちを地下水道にかくまい続け、ドイツ軍撤退後に無事に地上に生還させたという話しだ。公式サイトはこちら

惜しむらくは、会話の内容がイディシュ語、ポーランド語、ドイツ語、ロシア語と入り乱れる場面があるのだけど、しかも全員が全部を理解できるわけではないので、「ポーランド語で話せ」とか「なぜイディッシュ語を使わない?」とかのやりとりがあったりするのだ。この辺りは、どの国の話であっても全て英語で通してしまうアメリカ映画よりはよっぽど迫真的なので、言ってる内容は字幕に頼るとしても、これはポーランド語だな、これはイディッシュ語かな、とか推察できたらもっと場面を堪能出来たんだろうな。

映画の途中、あ、これは絶対に「地下水道」へのオマージュだな、と思えるシーンがある。なのでアンジェイ・ワイダ監督の名作「地下水道」を観ていない人は、先にそちらを観てから本作を観ると余計に味わいが深まることだろう。

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