*** テキトー絵日記 ***

2014/06/27 (金)

「日本の美しい女」文藝春秋

コラージュ

今朝、スーパーに入っている本屋で偶然に見つけたのがこの本、「日本の美しい女」(文藝春秋7月臨時増刊号)。昭和に活躍した女優66人を全てモノクロの大きな写真で捉えている。表紙の夏目雅子だけがカラーだが、中身は全てモノクロのポートレートと彼女たちを語る記事になっている。この本の巻頭には作家でグラフィックデザイナーの太田和彦氏が「時代精神の美しさ」と題してこんな風に書いている。(「以下抜粋)

スター女優の写真は映画スチールで見ることが多く、それは当然演じている役の顔になっている。撮影中のスナップでも半分は役だ。この本はそうでなく、女優の素顔集に特徴がある。役というフィルターなしの素の顔がどうしてこんなに美しいのか。「目鼻立ちが整っているのは言わずもがな」
登場するのは戦後からの女優たちだ。戦前ももちろん美人女優はいたが残存するステールは古風だ。しかしこの本の女優たちはまるで古風ではない。「今の人たちよりもきれい」ゆえに古風ではない。「今の人にこういうきれいさはない」とも言える。それはどうしてだろう。

この本は優れた女性ポートレート写真集という意味でもある。それも一枚か二枚でその女性の美しさや人となりを捉えたものが要求されているのだ。しかも多くの写真がオフの時間やインタビュー時に撮られているので、太田氏が言うように役なり営業なりの顔ではない。その人自身が反映されている写真なのだ。

掲載されているのは順に、浅丘ルリ子、夏目雅子、山本富士子、吉永小百合、栗原小巻、加賀まりこ、有馬稲子、久我美子、高橋惠子、大原麗子、酒井和歌子、芦川いづみ、和泉雅子、松原智恵子、京 マチ子、岡田茉莉子、原 節子、高峰秀子、岩下志麻、佐久間良子、木暮実千代、香山美子、山本陽子、香川京子、山田五十鈴、瑳峨三智子、太地喜和子、星 由里子、八千草 薫、中村玉緒、司 葉子、朝丘雪路、新珠三千代、若尾文子、江波杏子、富司純子、前田美波里、緑 魔子、中野良子、いしだあゆみ、桑野みゆき、十朱幸代、小山明子、南田洋子、倍賞千恵子、白川由美、月丘夢路、角 梨枝子、鰐淵晴子、水野久美、大空眞弓、園 まり、淡島千景、梶 芽衣子、岸田今日子、三田佳子、冨士眞奈美、草笛光子、池内淳子、団 令子、丹阿弥谷津子、浜 美枝、藤村志保、沢 たまき、乙羽信子、淡路惠子。

ふぅ〜、さすがにこれだけの人名なのでコピペしましたが、団塊世代やその付近の男性ならばいろいろ思い出もお在りじゃないだろうか。確かにここに出てくる女性たちの一番輝いていた頃を捉えた写真はどれも美しい。またある種の品があるというのも頷ける。それはスターがスターであった頃の写真だし、言い換えればスターがスターでいられた頃の写真だからだろう。

ところでその内容とは別の視点でこれらのポートレート写真を見ると別の興味も湧いてくる。それは純粋に写真撮影、あるいはカメラやフィルムの問題でもあるのだけど、中にはピントが甘かったり、被写体ブレしていたり、あるいは粒子が目立つものがあったりすることだ。もちろんこれらが作品としての写真の品位を落とすような事は無いのだけど、少なくとも今のカメラや写真撮影から言えばこういう曖昧な要素を持つ写真はまず採用されないだろう。つまり逆に言えば、今はそれだけシャープなものが要求されているということなんだろうが、なんだかそれが今の余裕の無さみたいな世相に通じている気がしないでもない。

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