by G1X Mk2
きっかけは以前にも書いた通りで、日本映画の金字塔といわれる、高峰秀子主演の東宝映画「浮雲」を見たことだった。さすがに名作映画といわれるだけあって、いろいろな感想が後味のように残った。
ならばこのハナシを更に受け止めるには映画よりももっとディテールを味わえる原作本を読むしか無いと考えた。特にラストシーンは映画と原作ではちょっと趣が違っていて、映画の方はまだ主人公の男性にも少しは情を持たせた感があるが、小説ではもっと破滅的なオトコの行く末を暗示している、というような文章がどこかにあったので、興味を持ってこの林芙美子原作の「浮雲」を注文したのだった。
その長編小説を本日読了した。映画を観た後でも感じたことだけど、確かに戦争、それも敗戦という時代の転換が大きな背景の要素を占めているとは思うが、それにしてもここに描かれているのは、何度も破局の縁に立ちながらそれでも惹かれ合う、いやむしろ断ち切れない縁で結ばれた男女の破滅的な文学である。桐野夏生がこの本を絶賛して林芙美子の評伝小説「ナニカアル」を上梓しているのもよく分かる。うん?すると次はこの「ナニカアル」を読むべきかな。
林芙美子の小説を読むのはこれが初めてだったのだけど、いやぁスゴイ人だなあと、いろんな意味で感心するばかりだ。
上映当時の宣伝ポスター(昭和30年)