白い雲に時折黒い雲が混じる by G1X Mk2
九州に接近している台風の影響だと思うが、夜半に雨があって、しかし朝からは晴れ、でも青空にもかかわらず時折雨が降るという変わりやすいというか落ち着きのない空模様の一日だった。相変わらずの高い湿度の上に今日は気温も外で39度をマークしたから蒸し暑いことこの上ない。気温が42度を記録した8月上旬よりも今のほうが圧倒的に不快だ。
小説「後妻業」が面白かったので、それから古美術の騙し合いを描いた「離れ折紙」、私学助成金の不正と教育現場の闇を描いた「煙霞」、オレオレ詐欺の実態を描いた「勁草(けいそう)」、そして北朝鮮にまで舞台を広げた「国境(上下)」と著者、黒川博行の作品を立て続けに読んだ。
このあたりで気分を変えようと、今度は「コンビニ人間」で今年上半期の芥川賞を受賞した村田紗耶香の「消滅世界」を読み始めたが、相変わらず鋭いというか独自のユニークな着眼点で書かれた内容に新鮮な驚きを持って読み進めているところだ。こんなことを言うとフェミニストから叱られそうな気もするが、こういう冷血というか、旧来のありきたりなヒューマニズムと距離を置くような視点は女性ならではないだろうか。女児が無邪気に子猫を生きたまま埋めて成り行く事態を観察している、というような。
黒川博行が良くも悪くも男性的だったのに比べると村田紗耶香はまさに正反対の視点のように感じる。これはなにも黒川氏が暴力に訴える描写が多く、村田氏は言葉の世界で訴えるからという意味ではない。むしろ現実世界の単純な暴力に対し、精神世界でのおぞましい怖さの違いと言っていいかもしれない。現在はp52あたり。